模倣品の個人輸入はモノを憎んで人を憎まず

これまで差止めの対象ではなかった個人輸入についても差止めの対象になってから、いままでは止まらなかった貨物が止まるようになってきています。

 

今回の法改正が施行されて、本当に「個人輸入」が止まるのかと懐疑的でしたが、実際に自分のところに届く認定手続開始通知書をみると、たしかに止まっています。

 

差止めの手続きは複雑で、業としての輸入、つまり商業輸入を止めることを前提としています。

商業輸入なので輸入される貨物の数も多かったり、課税価格も高くなるのが普通です。

 

いままでだったら個人輸入は差止めの対象外だったので、1000円程度の1個や2個の貨物の輸入は、外形上、個人輸入と扱って差止めの対象にならなかったはずです。

 

ところが今回の法改正で、「個人輸入」も差止めの対象になったことから、1個や2個の貨物の輸入も差止めの対象になり実際に差止めされています。

 

税関職員もとても大変だと思います。

いままでスルーできた極少量の貨物の輸入も差止めの手続きを採らなければなりません。

差止めの回数が増えても税関職員の数が増えるわけではないので、現場は相当疲労していると思います。

 

かくいう私も、これまではなかった1個や2個の貨物について意見書を提出することになり、事務作業が増えました。

 

さて個人輸入を止めることになった法改正の内容をみたときは、自分が当初予想していた内容と違っていたため意味を理解するまでに時間がかかりました。

立法技術としては優れているのでしょうが、この法律に基づいて個人輸入を差止めるのは無理がある、と思いました。

 

改正の内容は「輸入」の定義です。

輸入の主体を国内の者に加えて国外の者も対象にしました。

 

国外の者を日本の法律に基づいて侵害主体にすることにとても違和感があります。

 

今回の法改正の対象になって法域は、意匠法と商標法ですが、意匠法も商標法も侵害するのは、輸入するという「行為」です。

そして「行為」を行った者に対して、刑事罰等のペナルティを課しています。

輸入行為をした人に対して刑事罰もあるわけですが、例えば中国にいる者に対して逮捕状を請求して逮捕する、なんてことができないのは明らかです。

 

そうすると今回の法改正は、個人輸入を差止めるためだけ、という見方ができます。

なぜなら関税法が侵害とするのは輸入行為ではなく「物品」だからです。

 

人が悪いのではなくモノが悪い、だから悪いモノの輸入を止める、というのが関税法です。

 

もっとも関税法違反で処罰される対象は、モノではなく人なので、貨物を輸入したあとの事後調査をどうするのかという点にも興味があります。

 

立法的には上手に纏めた個人輸入のための法改正ですが、輸入差止め手続きの実務にも矛盾を感じます。

 

侵害となる貨物が個人輸入されるとき、輸入をした個人宛てに税関から通知がきます。

今回の法改正で侵害する主体は、外国にいる者なのに、なぜ侵害していない個人に対して通知がくるのだろうか、という疑問がでてきます。

通知を受けた「個人」が、何らのアクションを起こさなければ貨物の通関はできません。

 

さらに、外国にいる者も、事業として日本へ貨物を送っていなければなりません。

例えば、輸出者が個人名の場合、事業者なのか非事業者なのかは不明です。

それでも認定手続は開始されています。

 

輸入者の代理人の立場からすると、個人輸入については実質反論の機会が担保されていないも同然です。

 

実際のところは、対価の支払いを以て輸出しているのでしょうから、仮に輸出者が個人であっても事業者と見なして差し支えないのでしょう。

 

ただ本来であれば、侵害行為を行っている輸出者に発するべき通知を、侵害していない日本の個人に通知しているというのは、お門違いな気もいたします。