付記弁理士という制度が始まったとき、弁理士も訴訟代理人になれるということで話題になった.
付記がなければ弁理士に非ずという空気が醸成され、調べたことはないが付記弁理士の方が平弁理士より多いかもしれない.
侵害訴訟に興味がないわけではなかったが、訴訟代理人でなくても従前どおり保佐人として訴訟に参加できるので、それで十分.
弁理士に限らず弁護士以外に訴訟代理権を付与する仕組みができあがっている.
しかしどれだけの人が付記士業に訴訟を依頼するだろうか.
弁護士は弁理士その他の士業とは求められるものが違う.
弁理士に求められるものは技術的な専門性、知財制度に対する専門性.
それらはないよりマシという程度で訴訟では役に立たない.
訴訟で求められるのは相手が嫌がる攻撃を仕掛けること.
依頼者の利益になることなら何でもやらなければならない.
刑事弁護人がいきなり被告人の無罪を主張するというあれである.
そして現実的な問題として訴訟件数自体はとても少ない.
聞くところによると、地裁の侵害訴訟が年間500件程度、そのうち特許侵害訴訟は45%程度という.
これが増加傾向というわけでもなく、横ばい・漸減傾向.
弁護士のなかでも特許訴訟を扱える人は数少ない.
だからいって特定の特許弁護士以外に特許侵害訴訟事件が回ってくるとは思えない.
少ない侵害訴訟事件が特定の特許弁護士に集中し、そもそも審理期間が長いのが侵害訴訟だから審理が長引いても裁判官も気にしない.
特許弁護士が少なくても、特許以外なら技術アルレギーの弁護士がいる.
そしてここからが本題.
訴訟に対する懐疑心.
訴訟が機能しない.
訴訟で繰り広げらていることは揚げ足取りと時間稼ぎに過ぎない.
こんなことまで立証させるの!というようなことから、難しいから分かりやすくして欲しいというオネダリ.
地裁の裁判官が知財制度を理解するわけもなく、相手側代理人も知財制度を知らない.
一ヶ月に一回あるかないかの審理にもかかわらず、書面を前日に提出したり、提出せずに「精査中」の言い訳.
訴訟するまでもない論点でも、相手が無茶なことを要求したり逃げ回っているがための消極的な訴訟.
ようやく判決が出ても時間稼ぎが目的だから控訴は当たり前.
控訴判決がでるまでに実に3〜4年.
これで開放されるかと思いきや、判決が執行されるとは限らない.
強制執行となれば、さらに時間と費用がかかる.
判決なんか放っておけ!裁判なんか怖くないと思う猛者もいて、そうなると判決文はただの空証文.
弁護士が上手く解決するというより、弁護士が訴訟活動を複雑にしてしまうから余計に時間がかかる.
裁判は身も心もすり減らす.
人的金銭的資源が不十分な個人、中小企業は絶対に訴訟に頼ってはいけない.