訴訟するなら弁護士を選任するというのが暗黙の了解.
訴訟手続きが細かすぎて代理人を立てずに訴訟に望むなどということは考えれない.
というのがこれまでの認識だった.
ところが実際に本人訴訟の口頭弁論を経験してみると、これまでの考えを改めなければならないことを痛感する.
巷の意見、おおかた職業代理人の意見ではあるわけだが、本人訴訟にメリットは全くない、というのが大多数.
本人訴訟だからと言って裁判所は容赦しないだそうだ.
果たしてこれは本当だろうか.
もしこれが本当なら職業代理人が付いた相手方に勝てるわけがない.
プロとアマがハンディを設けずにやるゴルフと同じなのだから.
ところが裁判所は本人訴訟の当事者に対してとてもフレンドリーなのである.
なぜこんなにもフレンドリーなのかを弁護士に聞いてみると、十分な弁論の場を相手側に与えて審尋を尽くしたいというのが、その理由らしい.
裁判所が十分な審尋ができないことは本人訴訟を選んだ当事者側にある.
そんな口頭弁論で、十分な審尋を尽くそうと思ったら、裁判所は本人訴訟の当事者に助け舟を与えざるを得ない.
さらに本人訴訟の相手側は、職業代理人が相手のプロ同士の戦いには慣れているが、アマチュア相手には滅法よわくなる.
相手の突拍子もない主張に対して応戦を強いられるのだから、とてもやりにくいだろう.
そしてもう一つは、知財のような特殊な分野は、裁判所もよくわからず、弁護士もよくわかっていないという事情もある.
自分のことは自分が一番よくわかっているわけで、代理人をつけたからと言って必ずしも裁判で有利になるとは限らないし、なんと言っても弁護士費用は高い.
橘玲氏「臆病者のための裁判入門」という、氏が外国人の保佐人として裁判に望んだときのことを書いている興味深い著書がある.
保佐人って簡単になれるのか、と思ったものだが、職業としてではなければ誰でも保佐人になれるらしい.
幸いにも弁理士は、知財事件について「職業」保佐人になることができる.
本人訴訟のススメと言いながら、弁理士保佐人を宣伝していて恐縮だが、知財のような専門案件は、引き受ける弁護士も少ないわけで、だったら本人訴訟を挑戦してほしい.
そのときは弁理士を保佐人に選任することを忘れずに.