辨太郎日誌

特許・商標・意匠・著作権などなど知財を絡めて

功名の木登り

バイデン大統領が演説の終わりに口を滑らせたことが問題になっている.

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こんな立派な人でも気が緩むことがあるのだから自分のような凡人が口を滑らせるのも当然なのだが...

 

失敗その1

 

上海で働き始めたばかりの頃、知り合いの中国人弁護士から講演の依頼があった.

一週間前というタイミングだったことからすると、誰かのキャンセルでその代役だったのだろう.

演目は任せると言われ、法務関係なら何でもいいということだった.

参加する人の素性を聞いてみると、上海で法務関係の仕事をしている日本人.

それだけを聞いて当日の講演を行った.

専門家でなくても聞きやすい著作権について話すこと2時間.

時間配分もほぼ完璧で終盤に向かい、最後の一言で口を滑らせた.

「著作権について相談するなら弁護士より弁理士の方がいい」

 

講演の後の懇親会で名刺交換をして心臓が止まりそうになった.

ほとんどが日本人弁護士だった.

 

法務関係の仕事をしている人たち、というのは企業で法務関係の仕事をしている人ではなく、弁護士のことだったのである.

2010年代初めの上海には四大事務所の駐在事務所が揃い、その他にも、多くの日本人弁護士が現地の法律事務所にトレイニーとして参加しており、数十人規模の日本人弁護士が上海にいた時代である.

冷静に考えてみれば、企業法務部の人間が海外に駐在するわけもなく、現地法人に法務部があるはずもなかった.

上海に来たばかりの自分は、そのような思慮ができず、法務関係の人と聞いて、てっきり法務部の人たちのことだと思い込んでしまった.

懇親会の一時間は食事を楽しむ気にはなれなかったのは言うまでもない.

 

失敗その2

教師の研修会で著作権の講義をして欲しいという依頼があった.

週末に行われ、かつ講演料も安かったので、他に引き受ける人がいないから、という理由で自分に連絡があったのだ.

そんな裏事情を言わなくてもいいのにと思いながら、今後の糧になるかと思い依頼を引き受けた.

上海から静岡に戻ってきて1年目くらいのときだった.

 

質疑応答が早めに終わり、残り数分を残して気が緩んだのか余計なことを口にした.

聞いた頂いた先生方はどう受け取ったかわからないが、自分としては落第的な終わり方だった.

 

レクチャも何度も経験すると当初のような緊張感がなくなる.

それは結果として余計な一言につながるというのがこれまでの経験.

 

徒然草に「功名の木登り」という話しがあったが、的を得たりである.