辨太郎日誌

特許・商標・意匠・著作権などなど知財を絡めて

真夜中のSOS

インドの代理人からメッセージが入った.

出願却下の通知をしたあと、なぜか執拗に回復できないかという連絡が入るようになった案件.

審査官とも対応策を相談し、回復させる手段はないと伝えて納得したと思っていたが、昨日はついにhelp meというビジネスでは使わないような悲壮なメッセージが送られてきた.

 

出願却下はいくつもの段階を経た最終処分であって、却下の前にも弁明書提出の機会が与えられている.

通知が送られてくる度に現地に報告をしていたものの全く応答がなく、今回の最終処分に至ったというのが経緯である.

 

アクションを起こすことができる時期はいくつもあったのに、それらの救済機会を全て無視し、最終処分が出た途端に何とかしてくれと言われても打つ手はない.

 

推測の域を出ないが、今回の出願却下の理由は現地代理人側にあるのではないだろうか.

冷静な立場で対応を検討するすべき立場の代理人が、ここまで慌てているのは尋常ではない.

 

コロナを理由に何とかならないか?とも打診されたが、後の祭りである.

売掛けが蓄積されていく

外国案件を受けるのは嬉しいが、支払われるまでに費やす労力が大きい.

いま抱えている最長の未払い金は4ヶ月.

支払いサイトを1ヶ月に指定していても、期限内に払ってくれる代理人は半分程度だろうか.

リマインダーでしようやく対応してくれる代理人や、それでも無視し続ける代理人.

回収できなかったときのことを考えると胃が痛い.

特許事務所の場合、特許印紙の立替金があるので、回収できないと仕事をしたにもかかわらず損をすることになる.

 

今日、事業復活支援金が振り込まれていた.

申請してから一週間という早さは想像以上.

税務署の還付より早いとは思わなかった.

申請手続きは前回に比べて複雑になった気もするが、

振込までの時間は前回よりはるかに早い.

 

手続きが複雑になれば申請のミスも多いはず.

前回は給付までの時間が長いというクレームが多かったようだが、

今回はそのような声は聞こえてこない.

申請に関わっている人たちの労力は想像以上だろう.

功名の木登り

バイデン大統領が演説の終わりに口を滑らせたことが問題になっている.

news.yahoo.co.jp

こんな立派な人でも気が緩むことがあるのだから自分のような凡人が口を滑らせるのも当然なのだが...

 

失敗その1

 

上海で働き始めたばかりの頃、知り合いの中国人弁護士から講演の依頼があった.

一週間前というタイミングだったことからすると、誰かのキャンセルでその代役だったのだろう.

演目は任せると言われ、法務関係なら何でもいいということだった.

参加する人の素性を聞いてみると、上海で法務関係の仕事をしている日本人.

それだけを聞いて当日の講演を行った.

専門家でなくても聞きやすい著作権について話すこと2時間.

時間配分もほぼ完璧で終盤に向かい、最後の一言で口を滑らせた.

「著作権について相談するなら弁護士より弁理士の方がいい」

 

講演の後の懇親会で名刺交換をして心臓が止まりそうになった.

ほとんどが日本人弁護士だった.

 

法務関係の仕事をしている人たち、というのは企業で法務関係の仕事をしている人ではなく、弁護士のことだったのである.

2010年代初めの上海には四大事務所の駐在事務所が揃い、その他にも、多くの日本人弁護士が現地の法律事務所にトレイニーとして参加しており、数十人規模の日本人弁護士が上海にいた時代である.

冷静に考えてみれば、企業法務部の人間が海外に駐在するわけもなく、現地法人に法務部があるはずもなかった.

上海に来たばかりの自分は、そのような思慮ができず、法務関係の人と聞いて、てっきり法務部の人たちのことだと思い込んでしまった.

懇親会の一時間は食事を楽しむ気にはなれなかったのは言うまでもない.

 

失敗その2

教師の研修会で著作権の講義をして欲しいという依頼があった.

週末に行われ、かつ講演料も安かったので、他に引き受ける人がいないから、という理由で自分に連絡があったのだ.

そんな裏事情を言わなくてもいいのにと思いながら、今後の糧になるかと思い依頼を引き受けた.

上海から静岡に戻ってきて1年目くらいのときだった.

 

質疑応答が早めに終わり、残り数分を残して気が緩んだのか余計なことを口にした.

聞いた頂いた先生方はどう受け取ったかわからないが、自分としては落第的な終わり方だった.

 

レクチャも何度も経験すると当初のような緊張感がなくなる.

それは結果として余計な一言につながるというのがこれまでの経験.

 

徒然草に「功名の木登り」という話しがあったが、的を得たりである.

住所の表記違いで別出願人扱い

同じ出願人が登録した商標が引用された.

なんで出願人が同じなのに4条1項11号なのかと思いながら拒絶理由を見ると、住所表記が違うので同一出願人とは見做さない、となっていた

引用された商標は国際商標だったので、WIPOデータベースで確かめたところ、州の表記が国際商標にはあった.

現地からの指示書を確認したところ、指示書には州の表記がなかった.

こちらのミスではないことがわかって一安心.

州の表記がないだけでも別出願人と扱われるのかどうを審査官に確かめてところ、審査便覧には州表記の有無で同一扱いにするとの記載がないと指摘された.

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/document/index/42_111_01.pdf

 

なせ食い下がったのかというと、すでに同じ出願人の他の出願が登録査定になってしまい補正ができないからである.

住所の表示変更をすると印紙代がかかるし委任状も必要になるので、複雑化を避ける方法はないかと相談してみたが撃沈された.

 

今回の件で、出願人情報を正確に知らせる必要があることを改めて思い知らされた.

社名は意識していても、住所表記、英文にするので曖昧になりがちなのだが、過去の出願と異なる住所を使ってしまことは代理人が違ったりすればかんたんに起きてしまう.

銀行口座の断捨離

事務所を立ち上げたタイミングで開設した口座の解約を済ませてきた.

口座開設のときはもちろんメイン口座だったのだが、ご縁がなかったようで、数年前から休眠口座になっていた.

解約手続きを待っている間に、行内の様子を眺めなら、当時のことを思い起こしてみたのだが、何もわからなかった当時の方が今より何倍も楽しかったような気がする.

コロナで先行きに暗雲が立ち込めている今と比較しているのだから仕方がないのだが.

ニュースによるとドル円レートが120円になって、当時のレートに戻っている.

事務所の運営も為替のように上がったり下がったりを繰り返しながら進んでいくのだろう.

コロナで銀行が営業停止の上海

上海の代理人から送金の連絡があったがしばらくしても送金されない.

メールを送ってみたところ、

銀行近くでコロナ感染者が出たから銀行が営業停止してしまい、

送金処理ができない

 

という回答だった.

 

中国は本当に思い切ったことをする国というのは知っているが、コロナを理由に銀行を営業停止するというのは、日本の感覚ではなかなか理解しづらい.

www.sohu.com

上海タワーも封鎖されているという噂を聞くが、銀行という国営企業を封鎖しているからにはかなり深刻な状況なのだろう.

銀行再開の時期は不明とのこと.

ロシアといい、中国といい、海外送金を禁止している国がこの2つというのは偶然ではないような気もする.

特許庁から発送した登録証が中国の出願人に届いていないという

日本特許庁の暫定拒絶に応答してほしいという中国代理人からの依頼があったのが半年前.

費用をかけたくないということだったので、OAだけのワンタイム代理で引き受けることにした.

この場合、登録料納付、商標登録証の受け取りは行わず、中国側で対応することになる.

 

昨日、その代理人から登録証が届いていないというクレームがあった.

ステータスをみると一月半前に登録証が発送されていた.

現地代理人に伝えると、特許庁に確認して欲しいという.

特許庁いわく、中国の郵便事情で遅延しているのではないか、という回答.

 

登録証は普通郵便で出願人に直接発送したということだったが、コロナ禍とはいえ、中国なら一ヶ月もあれば届く.

 

日本特許庁に登録証が戻ってくれば再発送するという流れのようだが、そろそろ他国に倣って登録証は電子発行を採用した方がいい.

中国の白酒と日本の白酒

中国から商標出願の依頼をもらった.

簡体字の扱いに苦労はするものの、他の国に比べれば遥かにやりやすい.

 

指示書のなかに、「白酒」と書かれていたが、そのまま書いたら全く違う商品になってしまう.

日本にも白酒という商品があり、それは中国のそれとは違うこと、中国の白酒は蒸留酒の方がいいのではないかというコメントを返しておいたのだが、最終指示には、依然として白酒と書かれている.

単なるミスなのか、もしかしたらどうしても「白酒」を指定したいのかもしれない.

再びコメントを返したが、もし後者だと「中国の白酒」という記述がいいのかもしれない.

 

日本から中国へ出願するときも同じ問題が起こっていると思うのだが、担当者が気づかなければそれまで.

 

最近は改善されているようだが、日本から中国へ出願した特許明細書の翻訳が滅茶苦茶ということを聞く.

英文の参考明細書を送ってはいるが、中国語のチェックができず、登録になっていざ何かをしようとしたときに初めて中文の滅茶苦茶に気づくのだという.

 

何かアクションを起こさなければ滅茶苦茶な中文の特許に気づくこともなく、そのような特許に登録料を払って権利を維持しているのかもしれない.