辨太郎日誌

特許・商標・意匠・著作権などなど知財を絡めて

発明者の公開は個人情報保護の時代に反する

発明者を記載したくないという外国代理人からの出願指示がきた.

実務のプロだから発明者を願書に記載しなければいけないことは知っているはず.

そんなプロから、そのような指示がきたということは、発明者情報を開示しなくても出願できる国があるのかもしれない.

 

かくいう自分も発明者を願書に記載することについては懐疑的な立場である.

発明者の名前を書くことに違和感を覚えるのは外国人の名前を書くときである.

日本の実務では、発明者の情報を原文で記載することはできないから、カタカナに変換して書くのであるが、これが一義的に決められない.

アルファベットを単に英語読みしてカタカナに変換する人もいれば、現地の発音をカタカナに変換する人もいる.

鈴木と書いても日本はスズキだけど、中国だとリンムーになるし、

カエサルとシーザやピョートルとピータも日本で習うと呼び方が変わる.

つまり同じ発明者が、A弁理士が代理した場合と、B弁理士が代理した場合では、違う人になってしまう.

 

この点、出願人は原文表記が認められているから、原文を介して同一であることを確認することができるが、発明者にはその方法が使えない.

つまり、日本の実務において、発明者の情報が不正確であっても問題はないのである.

もし発明者の情報が極めて重要というのであれば、とっくに原文表記を認めているはず.

 

いまの時代、個人情報を開示することはリスクでしかない.

将来の権利者になる出願人と違って、「名誉権」程度のお飾りに過ぎない発明者情報なら、わざわざ願書に記載する必要はないだろう.

記載は良しとしても開示するかどうかについて本人が選択できるようにしてもよい.